パリに着いた3日目に、宿から一番近いサンジェルマンからオペラを繋ぐバス95号線の一区間の道路の舗装工事が始まりました。
東京で例えると、銀座から渋谷を結ぶ主要な一区間が通行止めになる感じ。便利に使っていたから、一瞬、不便を感じました。でも、他のみんなと同様に数分歩けば別のバス停があり、別路線を見つければいいことでした。
東京ではいたる所で道路工事を目にしますが、フランスやイタリアではあまり見ません。
もともとガタガタなでこぼこ道だから、あえて直すという事は、たぶん取りかえしようがないほどの、致命的な理由があるんだと思う。
また、いったん始まれば、永遠に終わらないんじゃないか、というくらい時間がかかるのもヨーロッパならでは。
時間がかかる理由は、日中しか工事しないし、日本みたいに夜中から早朝までなんて時間はまず働かない。この事は前から気付いていましたが、今回道路工事を見ていて驚くものを目にしてしまった。(驚きすぎて、写真を撮るのも忘れてしまった)
日本同様にアスファルトの道路に真っ黒のドロドロした液体を流すのですが、その液体を小さなバケツに入れ、工事人達がバケツリレーのように両手に抱え、えっせえっせと運んでいるではありませんか!
しかも、そのバケツがまるで歴史資料館に飾ってあるような、木製のアンティークなバケツ、いや、桶〜オケ?
「アルプスの少女ハイジ」の羊飼いのペーターが、ヤギの乳でも絞って、バケツを運んでいる光景を目にしている錯覚に陥りました。
衝撃でした。
別の日の朝、部屋から外出しようとしたら急に停電。鍵は手動だし、最上階といっても4階なので、不便も感じずエレベーターを使わず階段で降りると、どうやらホテルだけではなくここら辺一帯が停電していました。
外の道路に、たくさんの人が出て来ていました。ちょっとした騒ぎになっているかと思えば、煙草を吹かしてみんなで談笑?ホテルのフロントと目が合うと、一言。「今夜はキャンドルだね」
うーん、ゆとりがありすぎるよ、フランス人。
短期間いるだけで、こんなエピソードをあげたらキリがありません。
パリに限らず、外国の都会に行くと感じる最たる事は、「東京は、なんて、ハイテクなんだろう」と感じます。そして、「ハイテク=豊か」という図式は、決してイコールではない事を思い知らされる。
パリやNYが東京より遅れていると決して感じません。都会がハイテクでなければならない事は決してないのに、東京はどんどん未来都市のようにハイテクになっていきます。
自然と、スピードに乗り遅れないようにと早足になるし、周りを見回すゆとりがどんどんなくなります。
でも、その事でラクをして、実は考える力が退化しているような気がしてなりません。だから、何もない場所で過ごすのが苦手な子どもが増えている気がする。
パリでは、何もない公園やセーヌ川沿いで(本当に何もないのです)たくさんの子ども達や、大人達がただ集っている光景をたくさん見ました。日本みたいにゲームをしている子どもは見なかったです。携帯電話をいじっている光景も目にしません。
自分が見た限りだけの、小さな世界の中の発見だけれど、その場所・場所での発見に、線を引いて繋いでみると、いろんな事が見えてくるし、気付きます。
不便を不便と思わず、工事のバケツみたいに古いものを簡単に取り替えたり捨てたりせずに、当たり前のように使い続ける。だからこそ、ゆとりのある生活スタイルになっているのかもと思いました。
新しいものや、早くに変化している事に慣れている東京。
パリの街は本当に何年経っても変わらない。美しいものが、何年経っても美しいままに伝えられている。
ドイツ軍が侵攻して来た時に、この世界一美しい都を守る為に、パリ市民は武器を捨て、戦わずに無防備不戦都市宣言をしてこの都を守ったことと、ドイツ軍司令官はヒトラーから破壊命令があっても、その命令に従わなかったそうです。
日本は?もう失われたモノは取り戻せません。だからこそ、先人が残してくれた、今あるものを、大事にすることから始めようと思いました。
そして、もっと日本の昔からの訓話や伝統的な遊びをご年配から学び、知り、子ども達に日本のよさを伝えていけたらと思いました。
ご年配の人から「私は古い人間だからモノが捨てれないの」という言葉をよく耳にします。
「古い」のではなく、「生活スタイルにゆとりがある」人達なんだなって痛感しました。「古いもの」を捨てて、すぐに「新しいもの」に取りかえる事は、貧困な発想で、古いものを大事に使う事は、豊かな発想なんだとパリで学びました。
こういう発想転換をしていけば、子ども達が何もない場所で、遊ぶものが何もなくても集まって遊んでいる光景を増やせるかもしれません。
東京に戻ったら、いろんな事を取り組みたい気分になりました。みんなでコーヒーを片手に今回のパリでの発見を語り合う事から始めます。決してさぼっているんじゃないんですよ。
スローに行く事が、近道なんです。
パリで、いま注目されている、北マレにあるショップ「Merci」へ行ってきました。
マレの話は、次回に